先ずは、家の断熱性能をあげてみる。
下のグラフは2016年に買った中古住宅(ツーバイフォー/29坪/太陽光発電5kw搭載/オール電化)の実測データです。
冬の電力使用量が突出していますので
安直に「暖房エネルギーを減らす」=「高断熱化」の工事をしてみました。
先ずは断熱内窓を取り付けて2重窓にしました。
購入当初はこの家の断熱性はUa値0.87で北関東の温暖地域の省エネ基準をギリギリパスしていました.
この省エネ基準と呼ばれるものは確かに従来の木造住宅よりも省エネ性能の底上げにはなりますが、暖かい家かと言えばそうではありません。(Ua値)中途半端に断熱性能を上げた家で全館暖房をしようとすることでかえって消費エネルギーが増えてしまいます。
この家には元々ペアガラスの窓が付いていたのでその内側にLow-eペアガラスの樹脂製の内窓を付けてガラスが合計4枚の高断熱窓になりました。寸法の小さな窓は中空ポリカの内窓を取り付けました。コストパフォーマンスは抜群ではめ殺し窓にすることで気密性能も向上しました。
この窓の改修で断熱性能はUa値0.6まで性能アップしてエアコンの暖房でも快適に暮らせるようになりました。
ツーバイフォー工法ですので気密性能もそれなりに良く性能を上げた分が素直に体感出来ました。隙間風も更に減り静かで住み心地も向上しました。
この内窓の取り付けによる断熱性能の向上であくまで机上の計算ですが年間368kwの電気の節約になりCO2の排出が年間164㎏減らせたことになります。
灯油に換算すると63リットル分(ポリタンク3.5缶)に相当します。これに30年或いは50年の掛け算になります。
暖房負荷の低減が目標ですから暖房設備の低炭素化も必須です。
高断熱化で暖房に必要なエネルギーを減らす事も大切ですが、暖房そのものがCO2を排出させないものがあればそれも選択肢です。
ひとつはカーテンの開放です。冬は出来るだけカーテンを開け日射を家の中に取り入れます。
CO2を全く出さずに無償で家を暖めてくれます。
しかし、住宅密集地ではカーテンの開放や日本海側など冬季に曇りや雪が多い地域はそうもいきません。
もう一つの策はバイオマスストーブの導入です。
薪や木質ペレットは木の成長過程でCO2を吸収していますので燃焼させてもCO2の排出量にカウントされません。
上の写真のストーブは薪とペレットの両方を燃やせるストーブです。自然排気で煙突のドラフト(上昇気流)を利用して排気しますので電源も要りません。ついでに料理にも使える優れものです。
特にペレット燃料は間伐材や廃材・おがくずを利用しているので廃棄物処理の環境負荷も減らせます。
しかし、自然排気の煙突は郊外では問題ありませんが住宅密集地では着火時の白煙が立ち上がることであまり歓迎されません。高気密住宅においても換気計画と一緒に設計をしないと煙が家の中に逆流してしまいます。
その為、この家では強制排気のファンヒーター型のペレットストーヴを導入しました。このファンヒーター型は排気と送風に70wと僅かですが電気を消費します。
また、ペレット燃料を1t作るのに115㎏程度のCO2を排出してしまいます。他の燃料よりも圧倒的に少ないとはいえ人間のやる事なす事CO2を排出してしまいます。
このペレットストーブとエアコンを併用して暖房を行いました。下のグラフのペレットにはストーブの70wのファンの消費電力も含まれます。
それでは、ペレットストーブでどのくらいCO2排出を減らせたか?と問われるとそれが案外難しいのです。
高出力な暖房設備を追加することで、ついつい暖房時の室内温度が上がってしまうので前年との比較が出来ません。前年まで冬の暖房設定温度が23度でしたが26度になってしまいました。
今回はペレット燃料利用による削減効果に不利側ですが、単純にペレットの使用重量を電気に換算して計算します。
120㎏使用しましたので(1㎏=17MJ=4.22kw)電気に換算すると506.4kw使用したことになります。
この分を電気で暖房したとするとCO2を223㎏排出します。
更にこの分をペレット燃料に置き換えると製造時に排出される分の14㎏だけです。
223㎏(電気で暖房した場合)-14㎏(ペレットで暖房)でCO2の排出を209㎏減らせた事になります。
ペレットの熱量は日本木質ペレット協会参照
ペレットの製造時のCO2排出量は北海道立総合研究機構 森林研究本部 林産試験場参照