省エネ基準の住宅は省エネ?

住宅の省エネ性能を示すUa値とは外皮熱還流率

単位温度差あたりの外皮熱損失量です。
決して難しい事では無くただの暖房熱の逃げやすさです。

逃げやすさですので数値が小さい方が逃げにくく高断熱な家という事です。

熊谷市は6地域という温暖地に区別されUa値0.87以下を省エネ基準としています。

北海道の一部など寒冷地は1地域でUa値0.46以下を省エネ基準としています。

下のグラフは36坪のモデルプランの家を高断熱化していくとどのくらいエネルギー消費が減るのか或いは省エネ設備に交換するとどのくらい減るのかを可視化したグラフです。

温暖地では断熱性能を強化しただけでは数%しか省エネになっていないません。照明をLED に変更したり給湯器を省エネの設備にしたり熱損失の少ない換気設備にした方が手っ取り早く省エネ出来るように見えます。

※国立研究開発法人建築研究所の発行する「エネルギー消費性能計算プログラム」のモデルプランをたたき台に計算したものです。


6地域(熊谷等の温暖地)で高断熱+省エネ設備でどのくらい省エネ?


2地域(札幌等の寒冷地)で高断熱+省エネ設備でどのくらい省エネ?


Ua値0.85 C値4.5

Ua値0.87 C値4.5

Ua値0.45 C値0.7

Ua値0.45 C値0.7



6地域のUa値0.87の省エネ基準は昭和のライフスタイルであれば「省エネ」です。

 

この省エネ基準といういうものは快適性や人間の健康を求めた基準ではありません。

昭和の暮らしの様に間欠冷暖房(暖めたい時に暖めたい時だけ冷房はその逆)の暮らしであれば確かに省エネになると思います。

新しく家を購入し「この家は省エネ基準をクリアした家だから」と24時間全館暖房をしてしまうと大幅に消費エネルギーが増えてしまいます。上記のグラフの様にはなりませんし稼働率に比例してエアコンの買い替えのサイクルも縮まりますので省エネではありません。

温暖地でも冬はしっかりと寒く6地域の熊谷の冬の空気のエンタルピー(空気に含まれる熱量)は10.8kJ/㎏と新潟市の11.1kJ/㎏よりも少なく体感温度は低いのです。さらに熊谷市の冬は赤城おろしが吹きますので気密性能も上げないと更に寒く感じます。
温暖地であっても快適性を維持できて尚、省エネな家を求めるとUa値0.87では断熱不足なのは明らかで熊谷でも寒冷地並のUa値0.46くらいは確保したいところです。

 【蓄電池】

 将来、蓄電池を設置すると想定すると一番電気を使うシーズンに合わせて蓄電容量を選ぶ事になります。

温暖地と呼ばれる地域も冬は寒冷地並みに寒い地域も沢山ありますので現在の省エネ基準で住宅を設計すると温暖地の方が蓄電池の方が容量が大きくなってしまう事もあります。1年の平均気温よりも1年で一番寒い日の気温で住宅の断熱性能を決めた方が理にかなっています。

【給湯器】

 上のグラフでは給湯機器の変更によってUa値を0.2グレードアップしたのと同等のエネルギーが削減できる事がわかりますが現実はエコキュートはタンクの設置場所によって大きく結果が変わります。設計者のスキルによって0.2よも多く削減できますしまたその逆もあります。良い事ばかりでなく15年程度で故障する事を考慮する必要があります。

【建築的手法】

エアコン等の暖房器具も設置場所や使い方で効率が大きく変わります。

日射の取り入れ方や日射の遮蔽の方法により全体の冷暖房負荷も大きく変わります。

設備投資の回収が終わる前に地震で倒壊しても意味がありませんので家そのものを頑丈に作らなければなりません。

省エネ住宅の省エネ効果は設計スキルやその建築的手法で大きく投資回収率が変わるのは事実です。

基本的に省エネ住宅の省エネ効果は長期で考えないと性能を上げるために投入したエネルギーを回収する事が困難です。

省エネというからにはそもそも家が長持ちする設計にしなければなりません。

 【気密】

 上のグラフの数値は計算要素の断熱性能の劣化が無いものとしての計算です。防湿層(一般的に気密シートと呼ばれる物)が無く断熱材の劣化を招きやすい設計ではこのような省エネ効果は見込めません。また、熱損失の少ない換気システムを導入してもすきま風による熱損失はばかになりません。換気よりもすきま風の熱損失の多い住宅が未だに沢山建てられています。

気密性能(防湿性能)はとても重要です。

やたらと高価な断熱材を使うのであれば気密性能の向上をした方が快適性は担保できます。

 【呼称と現実】

「省エネ住宅」とは「健康住宅」と同様にただの呼称です。呼称通りの物の造り方を知っているか或いは造れるかは結局設計者と施工者のスキル次第になってしまいます。

「高性能な断熱材を沢山使用して建てられた家」と「高断熱の省エネ住宅」は似て非なるものです。

 

計算は概算です。机上の空論です。

※国立研究開発法人建築研究所の発行する「エネルギー消費性能計算プログラム」のモデルプランをたたき台に計算したものです。間取りや立地等で結果は変わりますことをご了承ください。 

                                         環境事業部  関口崇