省エネ住宅は本当に省エネなのか?

6地域(熊谷等の温暖地)で高気密+高断熱+省エネ設備でどのくらい省エネ?

上のグラフは

1年間の住宅のエネルギー消費量の目安を算出したものです。

Ua値(断熱)・C値(気密)・給湯機器・換気設備を変更した際にどの程度の消費エネルギーの削減効果が見込めるかを計算したものです。
Ua値は断熱性能を表したのもので熊谷の様な温暖地(6地域)はUa値0.87が新省エネ法の最低限度の基準です。

グラフを見ると単年では断熱性能をUa値0.87から0.2に大幅性能アップをはかっても10%程度しか省エネになりません。

断熱性の向上は削減できるエネルギーが暖房負荷だけですので住宅で使用するエネルギー全体で考えると工事にかかる費用に対して効果が薄くみえます。

 

C値(気密性)については具体的な数字にメリットは表れません。潜熱の漏れは計算が非常に困難な為です。

潜熱は冷暖房時の体感温度に影響しますので気密性が宜しくないと冷暖房負荷が計算よりも増えますので実際の消費エネルギーは上振れします。

同時に気密性能が低い住宅では断熱材が吸湿してしまう事で断熱性能が低下しUa値が計算よりも悪い結果になり消費エネルギーが増加します。

前述の理由で気密性能の差異を数値化するのは困難な為、特記無き限り自然な漏気が殆ど無いC値=0.3以下であることを前提で作文します。


寒冷地で断熱性能を強化した場合はどのくらい省エネになるか?

上のグラフを見ると温暖地で高断熱化するメリットはあまり無いようにみえます。元々暖房負荷が低いので当然です。

 

一方、寒冷地の1地域は暖房負荷が高いので断熱性能を上げる事で大幅に消費エネルギーが削減できます。


しかし、冬季は寒冷地でなくてもしっかりと寒いのでかかる暖房エネルギーはそれなりです。気温の低い期間の長さがこのグラフには反映されていますので、温暖地といえども断熱性能の低い家では暖房の効きがあまり良くありません。床面が冷たいと暖房の設定温度が高めになり計算値よりもエネルギー消費が増えてしまいます。壁や天井の温度が低いと放射熱を奪われ更に寒く感じ不快です。

 

そんなに省エネにならないなら「熊谷は暖かいから高断熱の家は要らない」と思うかもしれませんが新潟市の方が湿度が高い分エンタルピーは高く体感温度は高いか同じくらいです。
「新潟市はあたたかいから高断熱は要らない」と言ったら、どう思いますか?


赤はエンタルピー(空気1㎏中の熱量)青は絶対湿度(空気1㎥中の水分量)

 

網走市の1月の平均は-5.5℃/73%-1.01kj/㎏=2.4g/

網走市の7月の平均は17.1℃/83%=42.8kj/㎏=12.1g/

 

新潟市の1の平均は2.8℃/72%=11.1kj/4.2g/

新潟市の7月の平均は24.5℃/77%62.7kj/㎏=17.2g/

 

熊谷市の1平均は4.0℃/54%=10.8kj/3.4g/ 

熊谷市の7月の平均は25.3℃/76%=64.9kj/㎏=17.8g/


省エネ住宅は長期で考えるとどのくらい省エネ?

上のグラフは温暖地(6地域)で50年間省エネ基準ギリギリのUA値0.87の家に住み続けた場合と段階的に断熱性能を上げて計算した住宅のエネルギー消費の比較です。

Ua値0.87の家と0.2の家では0.2の家の約6年分のエネルギー消費が削減できます。
Ua値0.87の家と0.4の家で比べると約4.7年分のエネルギー消費が削減できます。
3段目は単年です。

矢張り省エネ住宅は省エネです。

上のグラフは寒冷地(1地域)で50年間UA値8.7の家に住み続けた場合と段階的に断熱性能を上げて計算した住宅のエネルギー消費の比較です。

Ua値0.87と0.2の家では0.2の家の約26.9年分のエネルギーが削減できます。
Ua値0.87と0.4の家で比べると約18.6年分のエネルギーが削減できます。
3段目は単年です。
寒冷地で比較すると圧倒的な差がつきます。


上記の様に省エネ住宅の省エネ効果は長期で考えないと性能を上げるために投入したエネルギーを回収する事が困難です。特に温暖地ではその傾向があります。

そもそも家が長持ちする設計にしなければなりません。

 

この省エネ効果は計算要素の断熱性能の劣化が無いものとしての計算です。防湿層が無く断熱材の劣化を招きやすい設計ではこのような省エネ効果は見込めません。気密性能(防湿性能)はとても重要です。


エコキュートはタンクの設置場所によって大きく省エネ性が変わります。また15年程度で故障する事を考慮する必要があります。

エアコン等の暖房効率も暖房器具の設置場所や使い方で大きく変わります。

日射の取り入れ方や日射の遮蔽の方法により全体の冷暖房負荷も大きく変わります。

グラフではわかりにくいですが太陽熱温水器は初期コストを考えると省エネ効果がとても高いです。

設備投資の回収が終わる前に地震で倒壊しても意味がありませんので家そのものを頑丈に作らなければなりません。

省エネ住宅の省エネ効果は設計スキルやその建築的手法で大きく投資回収率が変わるのは事実です。

 

省エネ住宅は長く住めば省エネです。
なにより快適です。

計算は概算です。勿論。

※国立研究開発法人建築研究所の発行する「エネルギー消費性能計算プログラム」のモデルプランをたたき台に計算したものです

間取りや立地等で結果は大きく変わりますことをご了承ください。

 

                                               環境事業部  関口崇